A jewel in a dunghill

雑念の地下シェルター

時をかける少女

 
もしもあの時・あの瞬間に戻ることができたなら、そんな誰しも一度は思ったことがあるようなことを主人公の真琴は偶然手にした力でやってみせた。
過去に戻ることができれば自分にとって都合のいい世界に変えることができ、嫌なことは全て戻ってやり直せる。
そんな夢のような力を手に入れたのはバカな女子高生だった。
せっかくの力をたいした事には使わないで失敗したなら戻ればいい、別に悪いことには使っていないのだから。そう思っていた真琴に対し叔母が言った「真琴がいい目を診ているぶん悪い目を見ている人もいるのでは」という台詞は作品の中で重要な意味を持つ言葉だった。
「だめだったら戻ればいい」そんな気持ちは3人の関係をギクシャクさせ、タイムリープを使わなければ到底到達しなかった未来を真琴は目にする。
叔母さんはその度に真琴は千昭のことを好きだと思っていた、真琴は功介のことを好きだと思っていたと言う。



それまでどちらにでもとれたことが、少し過去をやり直しただけでそう思ってしまう関係になっていた。それだけ高校生の日常は日々目まぐるしく変化していく。
進路や将来の夢に悩み放課後の教室や図書館の生徒たちを映したシーンからもそれは感じられ、その中でも真琴は唯一進路希望を出していなく未来のことを考えていなかった。
なぜなら真琴は将来やりたいことが見つかった時に過去に戻ってやり直せばいいのだから。
だけどタイムリープを使い切り千昭がいなくなった時、千昭とも功介とも友達のままでいて、いつの日か全く違う人と付き合うのだと思っていたことは自分の思いではないことを、千昭がいなくなったことで真琴は初めて気付いた。
千昭への思いを実感し、千昭のもとへ真琴が向かい静まりかえった教室に残された友達は一言、time waits for no oneと呟く。

 
「時は待ってくれない」最後のタイムリープを使った真琴はもう過去に戻ることはできない。
これから進むだけで戻ることのできない世界で真琴は千昭と向かい合い、本当の思いをはっきりと告げる。
真琴はタイムリープを繰り返す中で様々な人の思いを知り、それを知っていたからできた行動をしてきた。
だが結局は行動をするのは自分であり、その時その瞬間でなければ上手くいかないことが多い。
叔母さんが言ったタイミングとはそのことであり、いい目ばかりを見た結果が親友という身近な2人に悪い目を見せてしまった。
真琴は千昭を好きだったが、場合によっては功介を好きになったかもしれないし他の誰かだったのかもしれない。
時は待ってくれなく、その時々のタイミングで人は人を好きになり悩み思い出になっていく。
千昭が何年先の未来から来たかはわからないが、真琴はやりたいことを見つけて戻ることのできない未来に向かって時間を歩き出した。