A jewel in a dunghill

雑念の地下シェルター

劇場版アイカツ!

 
誰かに影響を与えてその人の世界までも変えてしまう、そんなことをアイドルは時折やってみせたりする。
神崎美月は星宮いちごの世界を変え、星宮もまた大空あかりの世界を変えた。
アイカツ!というアニメは星宮いちごを中心とするアイドルたちを描いた作品だった。
1年目はスターライト学園、2年目はドリームアカデミーが加わり両校と別の道に進んだ神崎美月、その中でも彼女たちのアイドル活動は神崎がトップであることが前提だった。
中学から高校に進んでも彼女たちアイドルの先にはいつも神崎がドンと構え、次々と神崎の試練に挑んでは敗れていく。
星宮いちごは主人公であり努力家でありアイドルの才能がある。親友の霧矢あおいが「アイドルの匂いがする」と告げたように星宮には人々を惹き付ける何かを持っていた。
それでも彼女は神崎美月には勝てなかった、勝ってはいけなかったのかもしれない。
アイドルを目指すきっかけでもあった神崎はトップアイドルであり、目標であり越えることのできない壁だ。だからこそ星宮が神崎を越えた瞬間アイカツ!という物語は終わってしまう。なぜなら主人公としての明確な成長を見ることができなくなるから。
よくアニメにある、季節はめぐるのに歳をとることもなく日常が続いていくアニメがある。このようなアニメはキャラクターが成長してはいけない、キャラが成長したら時間が進んでしまうので毎回リセットしなければいけないからだ。
だけどアイカツ!は違う、彼女たちは歳をとり経験を重ねていくのだから成長が見えなくなった瞬間に主人公としての物語に価値がなくなってしまうのだ。
視聴者にとって神崎美月はすごい存在だということはわかっても、成長はほとんど見えてこなかった。神崎がトップであることは当然だったから
だから劇場版では初めて個の力で星宮が神崎を越え、ひとつの時代を変え、また終えた。
これはテレビ版が3年目になり主人公が星宮から大空に変わったからこそやることができた。
2wingSWM勝利してもアイドルランキングの1位を守り続けたトップアイドルとしての神崎美月の時代は終わったのだ。
そして終わったのは神崎だけでない、星宮自身もトップアイドルの座を得たことで主人公としての星宮いちごに終わりを告げたのだ。
きっとこれからのアイカツ!でも星宮は度々登場するだろう。だがそれはトップアイドルになった星宮であり、わかりやすく成長していくことはない。
なぜならその役目は大空あかりが担うのだから。

神崎から星宮にバトンは渡された、同じように無限の可能性を秘めたバトンを星宮から渡された大空あかりの物語はこれから始まっていく。